電気自動車時代における潤滑剤と添加剤の役割

電気自動車（EV）の急速な普及により、自動車業界は歴史的な転換期を迎えています。この変化は消費者の行動様式だけでなく、潤滑剤や添加剤への需要にも影響を及ぼしています。EVが内燃機関（ICE）車両に比べて可動部品が少ないことは事実ですが、高度な流体技術と添加剤の重要性はむしろ高まっています。

1. EVにおいて潤滑剤が重要な理由

EVでは従来のエンジンオイルが不要になった一方で、熱管理や部品耐久性、効率化における新たな課題が生まれています。特にEアクスルフルードや変速機用潤滑油、冷却流体は高トルク・高速条件下での性能が求められます。

2. 従来型潤滑剤添加剤の継続的意義

近い将来においても、多くの車両はハイブリッドまたは内燃機関車が主流です。これらの車両では、TBNブースターやZDDP（亜鉛ジアルキルジチオリン酸塩）、分散剤、抗酸化剤といった従来型添加剤が依然としてエンジンオイル配合の基幹要素です。

3. EV専用添加剤の要件

EV向け流体には以下の特性が必要です：

• 熱伝導性と冷却性能（バッテリー・インバーター温度管理）
• 電気的適合性（安全動作確保）
• 極圧耐性（高トルク対応）
• 酸化安定性（高温下での長期安定性）

4. 環境規制が促すイノベーション

低硫黄・低灰分のエコフレンドリーな添加剤が求められる中、OEM各社は車両寿命全体に渡って持続可能な流体を要求しています。

5. 市場展望とビジネスチャンス

2030年までにEV向け潤滑剤市場は全体の20％以上を占めると予測されています。摩擦調整剤やTBNブースター、先進分散剤を提供する企業が競争優位を得るでしょう。

6. 添加剤サプライヤーの対応策

競争力を維持するためには、EV研究開発への投資、ハイブリッド対応ソリューションの提供、サステナビリティ推進、OEMとの協業が不可欠です。

電気自動車の台頭は潤滑剤の終焉ではなく、新たな章の始まりです。添加剤技術は、従来型とEV対応型の両方で進化を続け、モビリティの未来を支えるでしょう。