高性能潤滑油、特にエンジンオイルの配合において、添加剤の選択と最適化は性能と機器の耐久性に大きく影響します。中でも注目すべきはZDDP(ジンクジアルキルジチオリン酸塩)と呼ばれる抗摩耗添加剤で、業界全体で摩耗軽減、酸化安定性向上、エンジン寿命延長の能力が認められています。本記事ではZDDPの化学的特性、性能メカニズム、主要用途、配合上の考慮点、規制面について深く掘り下げ、実用的な知見を提供します。

ZDDPは亜鉛、硫黄、リン、炭化水素基で構成される有機金属化合物です。境界潤滑条件(完全な流体潤滑が達成できない状況)において摩擦や摩耗を低減する抗摩耗添加剤として機能します。高圧・高温条件下、特にカムシャフトやピストンリング、ベアリングなどのエンジン部品において金属表面に保護トリボフィルムを形成することでこれを実現します。
潤滑油メーカーやOEMエンジニアにとって、ZDDPの重要性は深刻な摩耗を防止し部品寿命を延ばす能力にあり、機器の信頼性と総所有コストに直接影響を与えます。適切な添加剤の選択は、酸化防止性能にも寄与します。
ZDDP添加剤は境界潤滑条件下で金属表面と化学的に相互作用し、主にリン酸亜鉛と硫化鉄で構成される強固なトリボフィルムを生成します。このトリボフィルムは優れた荷重支持性と摩擦低減特性を示し、金属表面を直接的な凹凸接触から効果的に保護します。

ZDDPは配合において酸化防止剤と相乗効果を発揮しますが、摩擦調整剤や一部の洗浄剤とは拮抗作用を示す可能性があるため注意が必要です。